今後、あらゆるビジネスを成功させるために意識しておくべきものがオムニチャネルです。
特に小売業界において注目を集めているマーケティング戦略ですが、小売に限ったものではありません。
簡単に言うと、実店舗とECサイトなどを連携させて顧客との接点を多く持ち、売上をアップさせるという戦略ですが、詳しい中身についてはあまり知らないという方も多いのではないでしょうか?
今回は、オムニチャネルの定義や他の戦略との違いについて解説するとともに、多くの企業がオムニチャネル戦略をとる理由や取り組み方について紹介していきます。
オムニチャネルは、小売業界だけで重要な戦略ではありません。多くのビジネスパーソンがこの記事を読んで、参考にして頂ければと思います。
オムニチャネルとは?
オムニチャネルは、「全て」という意味を持つオムニ(omni)と、流通経路のことを指して使われるマーケティング用語のチャネル(channel)を組み合わせた言葉になっています。
直訳すると、「全ての流通経路」になりますが、一般的にオムニチャネルとは、
「あらゆる場所で顧客との接点を持ち、どのチャネルからでも顧客に購買活動をしてもらえるように経路を繋げること」
とだと理解されています。
オムニチャンネルで使われるチャネルの例
- 実店舗
- チラシ
- カタログ
- 広告
- テレビCM
- ダイレクトメール
- ECサイト
- ウェブサイト(コーポレートサイト、比較サイト)
- スマートフォンアプリ
- 検索エンジン
- 地図アプリ
- ウェブ広告
- Twitter、Facebook、InstagramなどのSNS
- Youtubeなどの動画投稿サービス
昔は、顧客と接点を持てるチャネルは実店舗や紙媒体といったオフラインのみでしたが、インターネットの普及によってチャネルの数が増え続けています。
複数チャネルを持つのは当たり前の時代に
このように、現在ではチャネルは多種多様であり、顧客に自社の商品・サービスを見つけてもらうためにはチャネルを複数持つことが当たり前になっています。
複数のチャネルを組み合わせて連動させることによって、常に顧客との接点を確保することができ、その結果として、売上に繋げることができるのです。
また、オムニチャネルは小売業だけに関わる戦略ではありません。
顧客との接点を複数持って集客経路を繋げておくことは、これからのあらゆるビジネスにおいて重要な戦略になってくるため、意識しておきましょう。
マルチチャネルとの違い
オムニチャネルとよく似た言葉に、マルチチャネルがあります。両者を混同して使う人もいますが、異なる概念です。
マルチチャネルは、顧客に対する複数のチャネルを持つという戦略です。実店舗+ECサイトといったように複数のチャネルを持つのがマルチチャネルですが、それらが独立して運営されており連携していない点がオムニチャネルとの違いとなっています。
例えば、複数のECサイトを持っているが、ポイントサービスが連動していなかったり、個別に会員登録をしなければならないというのが、マルチチャネルのイメージとなります。
クロスチャネルとの違い
マルチチャネルから発展したものとして、クロスチャネルがあります。これは、複数のチャネル間で顧客管理システムや在庫管理システムを連携させることによって顧客満足度を向上させる取り組みです。
例えば、各チャネルで在庫情報が連携できていなければ、顧客が買いたいと思っても、別チャネル経由で完売してしまったなどの理由で、販売できず機会損失を起こしてしまう可能性があります。しかし、クロスチャネルであれば、在庫情報が連動しているので、各チャネルで適切な在庫管理ができるようになり、機会損失を防ぐことができるのです。
このように聞くと、「クロスチャネルは、オムニチャネルと同じではないか?」と感じる方もいると思います。しかし、オムニチャネルはクロスチャネルがさらに発展した形であり、ありとあらゆる全てのチャネルが連携していることに焦点を置いています。
マルチチャネル→クロスシャネル→オムニチャネルの順番で進化していると考えれば分かりやすいのではないでしょうか。
O2Oとの違い
もう1つ、オムニチャネルと混同しやすい言葉として、O2Oがあります。
O2Oは「Online to Offline」の略称で、
オンラインとオフライン間の連携で顧客を違いに誘導する戦略
となっています。
例えば、実店舗へ来店した顧客に、ECサイトへの登録を促しポイントを付与したり、ECサイトに訪問した顧客へ実店舗で使えるクーポンを配布するといった風に、オフラインからオンラインへ、オンラインからオフラインへと顧客を互いに誘導します。
O2Oも複数のチャネルを連携させて巧みに顧客を誘導していますが、オムニチャネルはオフラインとオンラインを問わず、全てのチャネルを使って顧客を誘導する戦略となっている点が異なります。
オムニチャネルが生まれた理由
きっかけはアメリカの百貨店「Macy’s(メイシーズ)」
オムニチャネルを最初に実践したのは、アメリカの大手百貨店であるMacy’s(メイシーズ)です。
その取り組みの背景には、Amazonを始めとするECサイト市場の成長に伴う営業不振がありました。
ECサイトの成長に伴って、実際の購買はECサイト経由で行い、実店舗では商品を手にとって確認するだけというショールーム化が進んでおり、大規模な販売戦略の刷新が必要とされたのです。
Macy’sは大規模なシステム投資によって実店舗とECサイトの垣根を取り払い、顧客情報や在庫情報を連携させました。
また、実店舗のスタッフにタブレット端末を貸与してECサイトの提案も含めた総合的なサービスを提供するといった様々な取り組みを実施しました。
スマートフォンやSNSの普及によって顧客の行動が変化
現在において、オムニチャネルが必要とされる理由は、上述したMacy’sの例にもあるように、購買に関する顧客の行動が変化したことにあります。
スマートフォンやSNSが普及したことによって、顧客は実店舗に行かなくても欲しい商品を調べて購入することができるようになりました。
また、インターネットやSNSでは膨大な数の商品を調べることができ、情報の流れるスピードも格段に早くなったため、商品の入れ替わりが激しくてリピート顧客の確保が難しくなっています。
そうした環境の中では、実店舗や特定のECサイトといった少ないチャネルだけ持っていては、顧客との接点を保ち続けることができずに売上が減少する一方です。
ありとあらゆるチャネルを総合的に運用・連携させることで顧客との接点を数多く持ち、売上をアップさせるオムニチャネル戦略を取ることが、これからの時代においてビジネスを成功させるために求められています。
オムニチャネルのメリットとは?
顧客との接点が増え、満足度が向上する
複数のチャネルを連携させて顧客満足度を高めるのが、オムニチャネルのメリットの1つです。
例えば、実店舗に来店した顧客が求めていた商品が在庫切れだった場合、オムニチャネルが実現できていなければ、諦めて別の店舗を探してもらうか、自宅に帰ってネットで探すしかありませんでした。
しかし、オムニチャネルが実現できていれば、実店舗で別店舗やECサイトの在庫情報を調べてその場で決済し、後日郵送で届けるといったことが可能になり、顧客の手間を軽減することができます。
また、顧客情報が一元管理されていれば、実店舗で購入した商品と関連する商品をECサイトでもリコメンドしたり、ECサイトでの購入履歴を元に実店舗を訪れたユーザーの嗜好にあった最適な商品提案をするといったことも可能になり、顧客の満足度を向上させることに繋がります。
顧客の囲い込みによる売上アップ
企業目線では、オムニチャネルで顧客を囲い込むことによって売上アップするというメリットがあります。
チャネルが少なければ顧客との接点が少なくなるため、顧客に自社商品やサービスを知ってもらえなかったり、一度購入してくれた顧客との関わりが途切れてしまって、他社の商品やサービスに顧客が流出してしまう可能性があります。
しかし、オムニチャネルが実現できていれば、実店舗での購入後にECサイトへ誘導したり、SNSによる情報発信で新商品の発売を顧客に認知させて、再度実店舗へ誘導するといった形で顧客との接点を保ち続けることができるようになります。
顧客との接点が多ければ多いほど顧客の購入パターンや嗜好のデータが蓄積されるので、個々の顧客に合った最適な商品やサービスを提供できるようになり、より顧客満足度が高まって囲い込みが可能になります。
オムニチャネルをどう進めれば良いのか?
ここまでで、オムニチャネルの定義やメリットについて紹介してきましたが、実際に企業がオムニチャネルに取り組もうとした場合はどのように進めていけばよいのでしょうか。
ここでは、オムニチャネルを進めるうえで重要なポイントを3つ紹介します。
オムニチャネルのロードマップを定める
オムニチャネルを成功させるためには、最終的なゴールとそれに向けたロードマップを定めることが重要です。
自社の現状と課題を詳細に分析し、オムニチャネルを実現することによってそれが解決できるのか、またどのようなオムニチャネルを実現すれば解決できるのかを考えましょう。
加えて、オムニチャネル戦略は中長期的な取り組みとなります。いつまでに、いくらの予算でオムニチャネルを達成するのかの目標を定めておきましょう。
どのチャネルを使って、どのように顧客へ価値を提供するかを検討する
上述したように、現在ではチャネルは多種多様であり、それぞれの特徴を理解して最適な組み合わせでオムニチャネルを実現する必要があります。
自社の商品・サービスによってもどんなチャネルを利用すべきかが異なるため、綿密に調査をしてチャネル選定をしましょう。
また、チャネル同士を組み合わせてどんな価値を顧客へ提供するのかも、あらかじめ考えておく必要があります。
小売業であれば実店舗との組み合わせを中心に検討すると思いますが、小売業以外でもオムニチャネルの考え方は必要になってきます。
ターゲットとなる顧客層に特化したサイトを複数用意したり、SEOやSNS運用によって顧客との接点を多く持つという戦略が考えられるので、小売業でなくてもオムニチャネルは意識しておくようにしましょう。
社内体制を整える
オムニチャネルはあらゆるチャネルを連携させる必要があるため、社内で関わる人も多くなります。
小売業であれば、主にマーケティング部門、実店舗部門、ネット販売部門、IT部門などが関わることになるでしょう。
部門毎に取り組みをしても上手く行かないため、それぞれの部門が連携して動けるようにプロジェクト体制を組むことが重要になってきます。
オムニチャネル戦略はマーケティングに主軸が置かれているため、マーケティング部門が統括し、各部門が協働して取り組むといった社内体制を整えて推進していくことをおすすめします。
オムニチャネルでビジネスを成功に導く
インターネットの普及によって顧客の購買行動が変化した現代においては、オムニチャネルを実現して顧客との接点を多く持ち、各チャネルを連携させて購買行動に繋げることがどんなビジネスにとっても重要な考え方になりつつあります。
オムニチャネルを実現させることは大変ではありますが、実現によるメリットは大きく、ビジネスを成功させるための原動力となるでしょう。
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