アドフラウドという言葉を聞いたことはありますか?
アドフラウドは、アド(広告)とフラウド(詐欺)を組み合わせた造語です。
アドフラウドの名の通り、詐欺的な広告出稿で広告主が本来必要のない広告費を払わないといけないといった内容です。
最近では、さまざまなアドフラウドによって広告主が被害を受けているケースが多発しています。
今回はアドフラウドについてお伝えします。
アドフラウドの現状とは
アドフラウドは、実は古くから存在します。
例えば、Googleアドセンスのようにクリックが起これば収入が得られるという仕組みの場合、不正なクリックを起こして収入を得ようとするユーザーが多かったんですね。
他にも、アフィリエイト広告で商品を購入してアフィリエイト収入を得ているにも関わらず、商品は受け取りを拒否するといったことも多発していました。
今では、上記のような古典的な方法は対策が生まれているのでほとんど不正は発生しません。
しかし、その代わりに進歩しているITの技術を使ったアドフラウドが増えているのも事実です。
アメリカでは年間8,000億円もの被害が生まれているとの調査結果も出ていて、経済的にも大きな損失を生んでいます。
また、日本はプログラマティック広告の全インプレッションのうち、80%がアドフラウドだったとい調査レポートもあります。
いずれも、商品とサービスを繋げる広告の価値を毀損する事態であることは間違いありません。
アドフラウドとビューアビリティ
ビューアビリティとは、「視認可能」を意味します。
ビューアビリティは、現代のアドフラウドを語る上では欠かせません。
例えば、あなたがスマートフォンを見ている画面の中に広告が表示されるとインプレッションが発生しますよね。
以前ならこの状態でインプレッションが発生しているという認識でした。
しかし現在は、広告の表示が画面の中にな表示されているかどうかをチェックして、「ビューアビリティなインプレッション」かどうかが重要になってきています。
広告主としては、ビューアビリティな広告であればインプレッションの価値があり、広告費がかかっても問題ありませんよね?
しかし、あなたが開いたページの画面外で広告が表示されていてビューアビリティではない状態だとどうでしょうか?
インプレッションとしては発生していますが、ビューアビリティではありません。
誰も見ない広告に広告費を払うのは意味がないですよね。
ちなみに、ビューアビリティについては2014年にGoogleから驚くべきデータが発表されました。
実は、ビューアビリティだった広告は全体の44%しか無かったんです。
半数以上は視認できない広告だったんですね。
広告費が無駄になってしまった広告主はもちろん、ユーザーも商品やサービスの情報を知るチャンスを失ったという意味でマイナスです。
2015年には、Googleはビューアブルインプレッションという視認可能なインプレッションを指標として実装する対策を行いました。
しかし、アドフラウドは様々な形で引き続き存在しています。
アドフラウドの手法と問題点
アドフラウドは、多種多様な方法で不正に収入を得ようとします。
例えば、自動でクリックを起こすプログラムを組んで異常なクリック数を稼ぐのは代表的なアドフラウドの手法です。
また、1秒程度で広告をどんどん変えるプログラムでインプレッションを不正に稼ぐような手口も頻発しています。
どちらも、広告本来の目的である「ユーザーに情報を届ける」ということは実現出来ないですよね。
つまり、アドフラウドは広告そのものの価値や効果を無くしてしまうデメリットだらけの仕組みなんです。
アドフラウドが増えればどうなるか
アドフラウドが増えるとどんなことになるでしょうか。
広告主とメディアや広告代理店の立場からそれぞれのデメリットを考えてみましょう。
広告主から見るアドフラウドはデメリットのみ
広告主にとって、アドフラウドはデメリットにしかなりません。
そもそも、広告主は商品やサービスを知ってもらうために広告を出稿します。
しかし、アドフラウドによってユーザーに情報を届けられないのに広告費がかかります。
まさに無駄なコストとなりますよね。
また、アドフラウドのような不正を行う配信面は得てしてモラルが低いメディアも多く存在します。
アドフラウドによって、意図しない配信面に大量に自分たちの商品やサービスの広告が出稿されると、ユーザーにとってマイナスの感情を生んでしまい、ブランド毀損になる可能性もありますよね。
今やSNSで情報は簡単に拡散されるので、一度失ったブランドイメージを取り戻すのは大変です。
アドフラウドは単にコストだけでなく、ブランドイメージというかけがえの無いものまで失う可能性があるんです。
メディアはアドフラウドで損をする
メディア側の目線でアドフラウドを考えると、短期的に収入を得ることが出来るというメリットは確かに存在します。
しかし、アドフラウドを助長するメディアだと認識されると、どの広告主も出稿しなくなりますよね。
つまり、メディアとしての価値が無くなるので、純広告はもちろんアドネットワークからも提携解除される可能性もあります。
アドフラウドで一時的な収入を得られても、中長期的に考えると確実にマイナスになります。
広告代理店にとってもアドフラウドは大敵
広告代理店にとってもアドフラウドは厄介です。
広告主側からするとアドフラウドはデメリットです。
なので、広告代理店の立場ではアドフラウドではないクリーンなメディアを提案しないといけません。
しかし、クリーンなメディアかどうかをチェックするには人的もしくは時間的なリソースがかかりますよね。
つまり、アドフラウドが蔓延してしまうと、広告代理店もメディアチェックにリソースが取られてしまい、企画や施策の実行といった本来注力すべき部分にリソースが割けないといった可能性があります。
アドフラウドは日常生活への影響も
アドフラウドと聞くと、「広告業界」だけの話と思われがちです。
しかし、アドフラウドが広まってしまうとユーザーである私たちの日常生活にも影響が考えられます。
例えば、アドフラウドが蔓延してしまうと、広告主は余計なコストも加味して広告施策を考えないといけません。
仮に、アドフラウドが無ければ、100万円の広告予算でユーザーに情報を届けられる場合を想定してみましょう。
アドフラウドによる余計な広告費を考慮して、プラス100万円したとします。
すると、広告費は2倍かかる計算になりますよね。
この増えた広告費はコストなので、回収するために、企業は商品の価格を上げたり、経費を削減したりします。
まず、価格が上がれば購入するハードルが上がるのは目に見えますよね。
また、経費を削減して安く仕上げれば自ずとパッケージや容器が安っぽくなったり、サービスの品質が落ちてしまいます。
仮にあなたの好きな商品がどんどん魅力がなくなっていき、高くなったら嬉しくはありませんよね。
つまり、アドフラウドを無くしていくことは「適正な価格で商品を購入できる」という日常生活を守ることにも繋がるんです。
アドフラウドを避けるには
アドフラウドについては、ユーザー側で対策できることは残念ながらありません。
あくまで、広告主であるメーカーやベンダーや、広告代理店が出稿する際に、アドフラウドを回避する方法を取ることで対策するしかないのが現状です。
では、具体的にはどんな対策があるのでしょうか。
不正な出稿先をブラックリストにする
一番手っ取り早いアドフラウド対策としては、不正と思われる出稿先をブラックリストとして広告出稿しないことです。
例えば、「広告表示回数は非常に多いが、成果には全然繋がっていない」といった配信先は、アドフラウドでなくても出稿する意味がありませんよね。
まず、この場合は単に配信先のメディアとターゲットユーザーが違っている可能性が考えられます。
しかし、ターゲットユーザーと親和性が高いメディアであれば、ビューアビリティではないインプレッションが起こっていて、アドフラウドの可能性もあります。
無駄な出稿先に広告が表示されていると、ブランド毀損や余計な広告費がかかってしまうので、配信先から除外してしまうことが対策としてスムーズでおすすめです。
ブラックリストとして設定し、配信しないようにすれば余計な広告費はかかりませんし、仮にアドフラウドだとしても予防することができます。
ただし、ブラックリストにするかどうかは判断が必要です。
インプレッションが多い分、ユーザーの認知獲得という役割を担っていることもあります。
ユーザーがどのようにして購入や会員登録といった成果に繋がっているかをアトリビューション分析などでしっかりチェックしてください。
アドベリフィケーションツールを導入する
アドベリフィケーションは、ブランドイメージを保護したり、ビューアビリティかどうかをチェックするためのツールです。
具体的には、広告主の意図しないメディアに広告配信されていないか、掲載される広告枠はビューアビリティかなどをシステムでチェックする機能があります。
効率的にアドフラウドを発見して除外するためにも、アドベリフィケーションツールを導入するのは有効な対策です。
アドフラウドのまとめ
アドフラウドは、不正な広告出稿によって広告主が本来かからない広告費がかかってしまうことです。
代表的なアドフラウドは、ユーザーが見ることが出来ない部分へ広告を表示したり、自動でクリックを発生させるなど不正なアクションを起こして広告収入を得ます。
アドフラウドが蔓延してしまうと、広告主はブランドイメージを毀損されたり、適正な価格で商品購入ができなくなることにつながります。
アドフラウドの対策は、ユーザー側での対策は残念ながらありません。
広告を出稿する側が、広告出稿先をチェックして配信して問題ないメディアを選定したり、アドベリフィケーションツールを導入してアドフラウドを対策する必要があります。
今後もアドフラウドは、広告出稿を行う上で避けては通れない問題です。
アドフラウドの存在をしっかりと理解して、対策していきましょう。